林業経済
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戦前期における林業種苗政策の形成過程(論文)(特集 林業種苗生産の現状と課題(4))
田村 和也
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2017 年 69 巻 10 号 p. 11-29

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抄録

優良種苗の確保と需給調整を柱として展開してきたわが国林業種苗政策の、戦前期の施策形成過程の経緯と背景を明らかにした。1900年前後から府県の奨励策により民間苗木生産が増加し、大正期のスギ赤枯病と物価労銀の高騰による生産減少の事態に、国も樹苗養成補助を開始した。各地の不成績造林の問題は、種子産地と造林適地の関係、母樹の重要性の認識を高めた。大正期後半から母樹設定に着手した国有林は、1934年に種子払下を開始し、また種子配給区域が設定された。戦時期に入り森林資源保続造成のため優良種苗供給の要請が強まり、39年に母樹確保と優良種苗の流通を図る林業種苗法が制定された。同法を契機に、府県では種苗業者を取り込んで戦時下の種苗需給体制が構築され、全国地区別の需給調整協議も試みられた。これら需給体制には、戦後の需給調整策の手段が既に登場していた。施策の背景には造林事業推進の要請があった。また域内自給自足が指向された。

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© 2017 一般財団法人 林業経済研究所
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