抄録
本論文は、滋賀県内の「遺跡発掘調査報告書」や、これら遺跡を紹介した「文献」に依拠して近江の古代人が木材をどのように利用していたかを取りまとめたものである。琵琶湖周辺には低湿地が広がり、遺跡からは多くの木材遺物が出土している。漁労生活や農耕生活の痕跡を残す木製品遺物(生産道具や「木器」)について使われている樹種や加工法はかなり解明されているが、木材の集荷圏の広がり(伐採や輸送)に関する考古学的発見は乏しい。殊に、大量に使用された大型建物の木材がどのように伐採・運送されてきたかについての考古学的成果は少ない。これを補完するのが文字記録の登場である。古代人の森林資源の利用の広がり、木材生産の広域化に伴う流通・加工・利用の状態を考古学的成果との関連性で捉えた。