2016 年 69 巻 7 号 p. 1-20
本稿では、近代日本の資本主義経済の発展に大きく寄与した在来産業の1つである材木業において、同業者組織がどのような役割を果たしたのかを、歴史的に検討することを目的とした。具体的には、明治22年(1889)に埼玉県の西川林業地帯に成立した準則組合である西川材木商組合をとりあげ、近代の同業者組織化が近世から続く林業や林業地の発展に果たした役割について、制度的側面と実態的側面から考察した。西川地方の材木商人は、近世以来の「筏仲間」をベースとして、近代租税法により県税徴収のために結成された「山稼仲間」から同業組合準則に基づく「準則組合西川材木商組合」を組織し、従来から直面していた筏の流送過程の安全問題の解決を図りながら新たな機能を付加しつつ活動を展開していった。その機能としては、製品の規格や検査の厳密化による品質保証、筏流送過程の整備・保守、組合員に対する金融機関的役割などがあげられる。これらの諸活動を通じて、西川材、西川林業のブランド化、産地としての確立を図り、西川地方の発展を促したと考えられる。