林業経済
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参加型森林政策における包摂と排除(論文)
フィリピン中部ルソンにおける権利付与を事例として
椙本 歩美
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2017 年 70 巻 4 号 p. 7-22

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抄録

本稿は、フィリピン中部ルソンでの参加型森林政策を事例に、村落のなかで政策に包摂される者と排除される者が生み出される仕組みを、権利付与プロセスを通して明らかにする。参加型森林政策は、森林地域に暮らす住民たちに国有林の利用権を国家が付与することで、森林保全と生活向上を目指すものである。他方で、国家が住民に権利を与えることは、人や森林資源を国家が統治することにつながるとも指摘されてきた。本調査地のように国有林と低地がつづく地形に村落がある場合、住民の一部に国有林の権利が付与され、権利を得る者と得ない者に選別しなければならず、権利の有無をめぐる住民間の対立も懸念される。ここでは、国家による承認、現場森林官による判断、住民による権利譲渡という、3つの権利付与プロセスに分けて分析し、排除と包摂の作用について考察した。国家の統治力が低い場合、参加型森林政策による権利付与は、地域の慣習や個人の判断という暗黙知に左右されることが多く、国家による人や森林の統治とは異なる作用が働いていた。

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© 2017 一般財団法人 林業経済研究所
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