林業経済
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アブラヤシ農園のランド・スペアリング機能の検討(論文)
インドネシア、グヌンパルン国立公園周辺地域の事例
御田 成顕 柳澤 翔太大田 真彦岩永 青史
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2017 年 70 巻 6 号 p. 1-21

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抄録
「ランド・スペアリング」は、一定の土地の生産性を高めることで、その他の土地の生物多様性保全を図る概念である。ランド・スペアリングのアプローチは、今後予想される人口増加に伴う食糧安全保障と生物多様性保全との両立のあり方を検討する目的で議論されてきた。本研究ではこの概念を援用し、集約的な土地利用の1つであるアブラヤシ農園の開発が自然保護区および地域社会に与えた影響を検討することで、アブラヤシ農園のランド・スペアリングとしての機能を評価した。インドネシア、西カリマンタン州に位置するアブラヤシ農園およびグヌンパルン国立公園に隣接する集落において、60世帯を対象とした訪問面接調査を行った。その結果、アブラヤシ農園の開発に伴い、地域住民の主たる生計手段が違法伐採を含む伐採労働からアブラヤシ農園からの収入へと変化し、国立公園の森林資源保全に寄与したことが確認され、アブラヤシ農園のランド・スペアリングとしての機能が示された。一方、世帯間においてはアブラヤシ農園収入の多寡に応じた経済的格差が認められ、今後さらに拡大することが懸念された。
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© 2017 一般財団法人 林業経済研究所
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