2018 年 71 巻 1 号 p. 1-21
本論文の目的は、明治42(1909)年に埼玉県西川地方に設立された重要物産同業組合「武州西川材木商同業組合」について、その役割、および同地林業の発展への関わりを解明することにある。前身となる同業組合準則による組合は、製品管理・品質保証など市場対応の機能を強め、かつ重要物産同業組合法による改組を経て一層その役割を明確にした。具体的には、流送関係の組合収支が急減する一方で検査費の比重が拡大し、規格化・品質管理など検査機能の強化が見られた。加えて博覧会や共進会への出品、他の先進林業地への視察などを通じて、品質改善の向上が図られ、西川材の評価を高めた。そのような組合事業の展開には、鉄道、トラック輸送という全面的な陸送への転換や、造林・伐出・加工・運材などにおける技術革新があり、飯能の材木産地市場としての地位の確立があった。その結果、「武州西川材木商同業組合」の勢力が強まり、大正11(1922)年に高麗川筋の準則組合との合併が実現し、地域範囲は最大規模となった。このように同業組合が西川林業地帯の発展に大きく貢献したことを明らかにした。