抄録
本論では、老朽化マンションの再生方策を提案するとともに、本方策の技術面、法規面、経済面の検討と、それに伴う国産材利用拡大の可能性の検討を行った。ここでいう再生方策とは、老朽化マンションの最上層を含む層を減築して、それによって減少した建築物の重量を超えない範囲で木造による増築を行うことをいう。その結果、技術面では、既存建築技術の組み合わせとなるため特段の課題は見当たらなかった。法規面では、従来からの入居者と、木造増築住戸への新規入居者との間の区分所有に関係した権利の整理が必要と導出された。経済面では、高額な販売単価や高額な賃料を期待できる都市部で本方策が成り立つ可能性が高いが、立地条件によっては地方都市でも成り立つ可能性が示された。本方策を通じた国産材利用拡大を図るには、結局のところ、従来から指摘されている木質系建築資材の安定供給、国産材原木の安定供給が重要であることが改めて示唆された。