抄録
日本の輸入財にかかる関税の撤廃によって生じる日本経済とりわけ林業セクターへの影響について、CGE比較静学モデルを用いて推計した。推計では、平成27年延長産業連関表基本分類表(平成23年基準)などを基に独自に作成したSAMを用いた。その結果、関税の撤廃により実質GDPが0.026%増加、家計の効用水準の改善の程度を示す等価変分は0.146%増加し、日本経済が活性化するという推計結果が得られた。他方、林業セクターでは、現行関税率が最も高い合板・集成材部門を中心に国内消費や国内生産等への負の影響が見られ、産業として縮小する可能性が示唆された。さらに、SAMによらず一律に設定した弾力性が推計結果に与える影響について感応度分析を行ったところ、本研究の推計結果は具体的な影響の大きさについては頑健性に乏しいものの、変化の符号については一定の頑健性が認められた。