抄録
森林経営計画のインセンティブ構造について理論的分析を行った。戦略型ゲームによりモデル化し、経営計画が作成されるナッシュ均衡と、作成されないナッシュ均衡の二つの均衡を導出した。前者の均衡が存在するには経営計画作成時から離脱しても利得が増加しない所有者が十分に存在する必要がある。後者の均衡は協調行動が必要な場合は常に存在した。利得支配、リスク支配の両概念は経営計画作成の利得が高いと前者を選択しやすく、通常の生活に感じる価値が高いと後者を選択しやすい。マキシミン解は後者を選択しやすいことが示唆された。補助金の増額や要件面積の緩和は、前者が存在する条件を成立させやすくするものの、後者も存在し続けた。現実に選択される均衡を予測するには均衡選択のメカニズムを明らかにする必要がある。