抄録
農林複合経営は我が国林業経営の主要な担い手の一タイプとして注目され、多くの研究が行われてきたが、全国的な分布などは十分明らかにされていない。本研究は、2015年農林業センサスの市区町村データを使うことで、農林複合経営が顕著に出現する地域を抽出し、その分布や経営内容の特徴を探ることを目的とした。分析結果から、第一に、本州以南(北海道を除いた地域)では山がちで耕地面積は狭いが中規模な山林保有層が多いところに、農業を主とした複合経営が多い地域と、農業とともに林業も活発な複合経営を営む地域があること、一方、北海道では大規模農業が見られる地域で複合経営が成立していること、第二に、農林複合経営は全国に広がり、森林の樹種構成は気候条件の違いなどから多様であり、農産品目では土地を多く要しない肉用牛の比重が共通して大きいほか、地域によって工芸農作物や果樹類、シイタケなど傾斜地を利用する農業に特徴があることを論じた。