抄録
本論では、地域における森林組合の木材生産能力がどのように変化してきたかという視点から、森林組合の林産事業と雇用労働者の現局面を明らかにする。分析に使用するデータは、都道府県別については1960年度から2017年度までの「森林組合統計」、単組については2011年度から2015年度の「森林組合一斉調査」である。近年の林産事業の大きな変化としては、利用間伐とともに主伐も増加したことが挙げられる。利用間伐中心の組合では、団地化・施業集約化を進めた結果、飛躍的に林産事業量を増加させる組合がみられた。主伐中心の組合は、北海道と九州の一部の地域でみられ、北海道の組合の多くは100%外注による生産を行っていた。雇用労働者は、「主に造林」作業者が大きく減少したが、年間210日以上就労する者の割合は増加した。森林組合が事業を取りまとめ、民間事業体が主伐を行う形態は、主伐期における地域の木材生産能力向上に重要な役割を担うことが期待される。