木造文化財建造物の周期的修理には文化財用材の持続的確保が不可欠である。本研究は、文化財の構成部材・補足木材の特徴及び文化財用材の調達構造を解明し、文化財用材の持続的確保に関して考察することを目的とした。研究対象は重要文化財の勝興寺とし、修理に関わる主体への聞き取り調査及び「構成木材調書」の集計を行い、それに基づき分析した。その結果、構成部材・補足木材にはヒノキアスナロ、スギ、マツが多く、ヒノキアスナロの多用に北陸地方の地域性が見られた。文化財指定外箇所には予算を考慮した樹種・等級の変更が行われていた。文化財用材の調達では、それに携わる主体間に築かれるネットワークや商習慣の存在を把握した。ネットワーク外では資源情報が集約されづらく、資源の減少が深刻化する中で文化財用材の供給に制約が強まる可能性があり、木材納入業者に材の詳細な仕様をわかりやすく伝えるための「検査の目安」の活用や品質検査のあり方で木材利用の合理化、木材納入業者の負担軽減を図る必要性を考察した。