抄録
非住宅木造建築物における国産材利用の拡大に向けた課題を検討するため、設計・施工事業体を対象に、非住宅木造建築物に利用した木質構造部材の寸法や樹材種、価格に関するアンケート調査を実施し、その利用実態について分析した。その結果、製材は、2階建て以下の物件で多用され、利用材積全体の65%が汎用品であり、国産材は95%であった。集成材は、耐火建築物以外で用いられ、40%が汎用品であり、外材は68%を占めた。耐火集成材は、3階建て以上の耐火建築物で用いられ、ほぼ非汎用品であり、国産材は85%であった。木質構造部材の利用材積は、戸建て住宅の10倍を超す物件が多いため、特に非汎用品を含む場合には部材調達に苦労していた。床面積あたりの木質構造部材の利用量は、階数が高くなるほど減少した。価格分析から、国産材製品は汎用品の一部で価格競争力があったが、総じて価格競争力に乏しかった。それでも国産材が多用されたのは、地域材指定が影響したためと考えられる。なお、外材集成材も非汎用品価格は高価であり、他工法に対するコスト競争力を減退させていた。以上から、非住宅建築物の木造化を国産材で進めるには、製材の汎用品と集成材の非汎用品の低コスト供給が重要と考える。