抄録
近年の広葉樹活用論の問題点を、森林施業論および森林生態学の視点から批判した。広葉樹活用論は、構造も維持機構も多様である対象を広葉樹あるいは広葉樹林と一括して扱っているため、持続的管理のための議論が成立しない。里山のコナラ萌芽林についての理解である、伐採し若返らせることで森林が維持されるという論理を、無批判に広葉樹林一般に敷衍した結果、広葉樹活用論は、伐採し利用することが広葉樹林一般の保全に貢献するという根拠を欠いた予定調和論となっている。現状では、多くのタイプの広葉樹林については、持続的な管理技術が未整備であるため、広葉樹活用論が勧める活用は採取林業に帰結するだろう。また、不用意な伐採は現存する広葉樹林の種多様性を劣化させるが、これは将来、地域に多様な森林管理、林業を発展させる可能性を狭めるものになるだろう。