抄録
生物多様性保全の観点から緑化材料としての地域性苗木に注目が集まっている。本研究の目的は、地域住民による地域性苗木生産の存在形態と展開過程、その生産動向、労働配分等と生産継続のための課題の解明である。まず、文献調査を行い、大台町における地域性苗木生産の展開・背景を明らかにした。次に、地域性苗木生産の担い手の実像を明らかにするために2022年9月にアンケート調査、同年7月、10月に三重県大台町において聞き取り調査を行った。三重県の大台町苗木生産協議会では、地域住民を会員、宮川森林組合を事務局として2008年から特色ある広葉樹主体の地域性苗木生産を行っている。その成立には宮川森林組合と大台町による新たな森林整備事業の導入が大きな役割を果たした。2021年度に協議会は約38,000本の苗木を生産し、うち約2,400本を出荷した。苗木の育成にあたっては年間を通して採種・播種・灌水・施肥・鉢上げ、履歴情報の記録・在庫調査などが行われていた。2022年時点で、出荷・販売量の減少、収入の低下、会員の高齢化および新規会員不足等の課題がみられた。