抄録
日本の多くの山道は、ボランティアの整備が欠かせず、広域にわたり多様な制度等が関係するため、管理体制は複雑で、解明が進んでいない。本稿では、関係主体への聞き取りから、三重県・和歌山県の9市町に所在し、一部が世界文化遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の構成資産となっている熊野古道伊勢路の山道の管理体制を解明した。その結果、
2 県間の差異が明確となった。三重県では、構成資産と近畿自然歩道の所管部局間で縦割り行政が生じていた。地域住民主体のボランティア(保全団体)は、担い手、連携、活動の法的根拠・財源が不十分な中、地域資源への愛着のもと活動し、地域コミュニティの維持増進に寄与していた。一方の和歌山県では、教育行政中心に公的性格の強い限られた主体による体制が確立していたが、民間主体の参画が乏しかった。また、両県とも自治体間の連携は低調であった。持続的かつ一体的な管理に向けた統括組織の可能性が示唆された。