2021 年 16 巻 1-2 号 p. 112-126
日本におけるフランス語の学習者は、学習方法がフランスと異なるため、議論や討論のようなアクティビティに対して苦手意識を持っている場合が多い。日本人の学習者は、確かに、討論の場で自分を前に押し出すことや、自分の考えを合理的に説明することに慣れていない。他方で、CECRLによると、B2レベルから学習者には討論に近いアクティビティに参加できるように、思考を合理的に述べる能力と、異なる考えを比較し、突き合わせる能力の習得が求められる。ところで、CECRLで求められている能力は、明らかに欧米さらに欧州中心主義的な考えに基づいており、日本の学習者の考え方や文化的なバックグラウンドを必ずしも踏まえていない。本論文では、この問題における仮説や困難を考察し、さらに合理的な思考能力の獲得の重要性について述べる。このため、日本の外国語授業における論証・論述の教育法を概観してから、フランス語の授業で討論に慣れさせるための実践方法を提案する。