2024 年 19 巻 1-2 号 p. 182-187
日本のフランス語教育では1970年代に欧州で誕生したコミュニカティブ・アプローチ(AC)について数多くの議論が展開され,欧州言語共通参照枠(CECR)の発表以降には共通参照レベルや複言語主義に関する研究が行われてきた一方,「行動中心の考え方」(PA)については十分に議論が進められていないように見受けられる。そこで,本稿ではPAがACといかに異なるかを検討した上で,フランシュ・コンテ大学付属語学学校CLAで実施した調査結果を分析し,フランスのFLE教育におけるPAの受容と実践を探った。その結果,CLAではPAは学習者の学習意欲,協働性,能動性の向上に有効な教育のあり方の一つとして実践されていることが明らかになった。本調査結果の他にも,日本のフランス語教育においてPAにもとづく授業を実践した一部の研究者たちによってPAの有効性が指摘されており,今後PAの日本における実践方法やその意義について議論を深めることが望ましいと思われる。