抄録
血液透析を受ける患者(以下、透析患者)は水分制限に加え、様々な要因によって唾液分泌が減少し、口腔乾燥状態にあることで、Quality of Life(以下、QOL)が低下していることが示されている。本研究は、透析患者の口腔乾燥感の有無によるQOLの違いを明らかにすることを目的に研究を行った。外来で血液透析を受け、透析導入から3か月以上経過した18歳以上の認知機能に問題のない患者40名を対象に、口腔乾燥感(Xerostomia Inventory scale score:XI、以下XI)およびQOLを測定し、口腔乾燥感の有無の2群間でQOLを比較した。結果は、対象者は男性31名、女性9名の計40名、平均年齢は64.8(±13.5)歳、原疾患は糖尿性腎症14名、慢性糸球体腎炎13名、腎硬化症5名、その他8名であった。口腔乾燥有群は口腔乾燥無群に比べ,the Kidney Disease Quality of Life Short Form: KDQOL-SF™(以下、KDQOL-SF™)の下位尺度の腎疾患特異的尺度は、「症状」「腎疾患の日常生活への影響」「認知機能」「人とのつきあい」が、包括的尺度であるMedical Outcome Study Short Form 36 Health Survey: SF-36®(以下、SF-36®)は、「体の痛み」「全身健康感」「活力」「心の健康」が、サマリースコアは、「精神的側面のサマリースコア」の得点が低く、統計的有意差が認められた。さらに、本研究参加者のSF-36®と国民標準値との比較では、下位尺度の「身体機能」「日常役割機能(身体)」「体の痛み」「全体的健康感」「社会生活機能」「日常役割機能(精神)」が国民標準値よりも低く、統計的有意差が認められた。サマリースコアは、身体的側面、社会的側面のサマリースコアが国民標準値よりも低く、統計的有意差が認められた。一方で、精神的側面のサマリースコアは、国民標準値に比べて得点が高く、統計的有意差が認められた。今回の結果から、本研究の対象者の口腔乾燥感はQOLの低下に影響があること、さらにSF-36®は国民標準値よりも低下していることが明らかとなり、口腔乾燥を改善する介入の必要性が示された。