抄録
本論文では,光学赤外線天文観測データアーカイブシステムの検索高速化のためにおこなった実験とその結果について報告する.高速撮像観測装置であるTomo-e Gozenや広視野撮像観測装置であるHyper Suprime-Camでは,日々膨大な数の観測データが生成されている.これらの観測データを公開するデータアーカイブシステムでは,データ数の膨大化により検索速度が低下する.我々は,Tomo-e GozenのデータをアーカイブするSMOKA/Tomo-e Gozenシステムのデータベースとその検索用SQLクエリを使って,検索速度の高速化実験をおこなった.具体的には,最適なテーブル分割数とパラレルクエリの設定,SSD上へのテーブルファイルの配置,並びにPostGIS R-tree空間インデックスの効果を検討した.第一と第二の実験ではキャッシュ無効時の実行時間を,第三の実験ではキャッシュ有効時の領域検索の実行時間を短縮できることがわかった.それぞれの実験の実行時間の減少率は最大で83 %,98 %,91 %程度であった.本論文ではこれらの実験の詳細を述べると共に,膨大な数の観測データを有するデータアーカイブシステムに最適なデータベースの設定等について論ずる.