日本リモートセンシング学会誌
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人工衛星(AVHRR/NOAA-6) による伊豆大島沖の渦の計測と局地性湧昇
愛甲 敬高橋 正征
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1982 年 2 巻 3 号 p. 3-9_1

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抄録

海洋の沿岸域において,海流や吹送流が海底・海岸地形と作用しあって,湧昇(局地性湧昇)を発生させることは,海洋物理学的に古くから予測されてきた。船舶による狭い範囲内での精密な測点観測や,表層水の航走連続観測法の普及によって,日本近海でも最近湧昇水塊が観察されている。その結果,湧昇水塊は海面で1~数10kmの巾の空間的広がりをもち,周辺水に比べて水温が1~5℃程度低いことが明らかになってきた。航空機MSSは,水温差から海面での湧昇水塊の分布様式を見事に把え,海流場内の島陰に後背渦性の湧昇水塊を検出した。加えて,湧昇水塊がしばしば数時間のスケールで変形したり,移動しているらしいこともわかってきた。
そのために航空機よりさらに広域をカバーでき,しかも頻繁に観測情報の入手可能な手法の利用が急務になってきた。そこで人工衛星の利用を考えることにし,対象としてNOAA-6に塔載されている高解像度放射計(AVHRR)をとりあげた。1980年11月19日午前8時のAVHRR/NOAA-6の観測資料を入手し,伊豆大島周辺水域の第4チャンネルの情報を分析した。海面での水温分布が明瞭に把えられ,船舶による水温実測からほぼ3℃ほど低温側にズレていることが明らかになった。補正した水温パターンは,海面での水温実測とかなり良い一致を示した。観測当時伊豆大島周辺には黒潮の枝流が流れており,島の裏側に,以前に航空機MSSで把えられたと同様の後背渦が観察された。渦は島の北側沖では時計回り,南側沖では反時計回りを示し,渦の一部分に湧昇性の低水温域が検出された。
AVHRR/NOAA-6は約0.1℃の温度分解能および約1kmの空間分解能をもち,さらに測定空間巾が約3,000kmの広大さである。これは広域での湧昇水塊の分布把握に極めて有効である。また,NOAA-6は日本近海に1日2回飛来し,少なくとも4~5日周期でほぼ同一水域上を通過するので,1~数日より長い時間間隔での湧昇水塊の移動・変形あるいは出現頻度などの時系列研究も可能である。

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