砂防学会誌
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土石流による土砂流送量に関する水文学的アプローチ
奥西 一夫諏訪 浩岡本 正男東樹 芳雄浜名 秀治
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1982 年 35 巻 2 号 p. 24-30

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抄録
長野県の焼岳東斜面にある通称焼岳四堀沢のうち,上々堀沢を対象にして,土石流による土砂の流送量と水文量の関係を解析した。焼岳四堀沢では毎年のように土石流が発生し,大量の土砂が流出している。しかも平常は表流水がないので,顕著な土砂流出は専ら土石流の発生・流下に伴って生じることがわかっている。
まず,土石流発生条件に関するこれまでの調査結果を総括し,発生地点における降雨流出量がある限界値を越えた場合には,ほぼ確実に土石流が発生することを明らかにした。次に,土石流発生地点よりも上流における土砂流送は本質的に水流により流送であり,その量は有効雨量に比例することを示した。一方,この沢の下流の観測点で計測された土石流のハイドログラフの積算量は,土石流の発生に関与した降雨よりも,むしろその土石流が発生する1時間前からの前駆雨量を含めた,より長時間の降雨量に依存するようである。
土石流によって運ばれる土砂の量が流下方向にどのように変化しているかを調べるために,空中写真測量によって得られた各区間の侵食土砂量を積算し,各地点における通過土砂量を算出した。この通過土砂量の流下方向への変化は時期によって大きく異なるが,それぞれの期間の通過土砂量をその期間内の積算有効雨量で除した値(K値)は,流下方向に系統的な変化を示すことがわかった。個々の土石流に対してK値が算出されれば,それは土石流の流下につれて,その規模に依存するある平衡値に漸近していくであろうことが示唆される。
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