抄録
斜面崩壊について, 飽和・不飽和浸透流解析によって得られる土層の水分状態の経時変化を極限釣り合い法(簡易Bishop法) による斜面安定解析に組み込み, 斜面の安定性の経時変化を精度よく求める方法を提示した。この方法により矩形降雨を与える数値実験を行い, 斜面の安定性の経時変化を求めたところ, 総降雨量が同一の10mm/hから40mm/hの矩形降雨条件下では, 最小安全率はほぼ同一であったが, 降雨停止から最小安全率を示すまでに時間的な遅れがあり, その期間は降雨強度が大きいほど長い結果が得られた。また, 降雨開始時の斜面の初期条件を流出量で表現することによって, 崩壊に至るまでの各初期条件ごとの累積降雨量が求められ, 本解析法が危険降雨量設定に有効であると考えられた。