2016 年 10 巻 1 号 p. 47-57
人に話せない衝撃的な経験,重要な経験について数日間,複数回書き続けることにより,心身の健康が促進されることが報告されている。このような手法は筆記表現法(Expressive Writing)と呼ばれている。
筆記表現法の実施は安価であり,手軽に行えることからその普及が期待されるものの,国内では高齢者を対象とした研究は報告されていない。本研究では,ホームワーク形式にて東京都A区在住の高齢者129名を対象とした筆記表現法のパイロットスタディを行った。53名からホームワークの返送があり,介入効果の解析に用いた人数は,筆記群では13名(男性4名,女性9名,平均年齢75.5±4.1歳),日記群は19名(男性2名,女性17名,平均年齢75.4±5.5歳)であった。介入の効果指標は抑うつと関連が深い,ネガティブなことを何度も考え込んでしまう「反すう傾向」とした。介入の結果,反すう傾向が高い対象者については筆記表現法が反すう傾向の減少に寄与することが示唆された。