抄録
令和3年4月1日より,金属アーク溶接作業を継続して行う屋内作業場では,個人サンプラーを用いた労働者の呼吸する空気中の溶接ヒューム濃度の測定が義務付けられた.当社では令和3年4月1日から令和4年3月31日の期間に46事業場(67均等ばく露作業)の溶接ヒューム濃度測定を実施した.その結果を集計し,溶接作業を行う現場の現状について報告する.溶接作業は局所排気装置の設置義務はないため,マンガンの管理濃度0.05 mg/m3と比較すると,均等ばく露作業ごとの労働者に対して行われたばく露測定では,全体の約6割が管理濃度を超える集計結果となった.要求防護係数では,10未満となるのが約9割程度であった.そのため,現状として使用されている性能区分の防じんマスクを使用していれば呼吸用保護具による防護対策はできていると思われる.ただし,防じんマスクを着用していない作業者が若干見受けられ,そのうち,1時間未満の短時間作業であっても0.05 mg/m3を超える割合が半数を占めているため,確実に防じんマスクを着用することが重要と考える.