2013 年 26 巻 2 号 p. 17-27
この論文では,眠れないことを主訴に来談した18歳女性との面接経過について検討した。最初は,軽い解離があることがうかがわれた。心理療法の経過の中で,二つの気持ちや二つの世界のテーマを生きる中で,徐々に葛藤を抱えられるようになり,解離は夢の中におさまっていき,リアリティを得ていった。外側に生じていたことが,いかに心的で内的な世界におさまっていったかについて検討した。夢では,傷や裏切りのテーマがあった。傷は,単に傷ついた感情を意味するだけではなく,イニシエーションとして刻印されるものとしての意味があった。そのような傷や傷の刻印の意味について,Hillmanによる錬金術の「塩」と「硫黄」の観点を取り入れることにより考察した。また,傷の刻印が生じにくいと考えられる現代の意識についても考察した。