2016 年 29 巻 1 号 p. 101-115
本研究は,夢の構造分析を日本人のクライエントの事例と西洋人のクライエントの事例に適用することにより,夢の構造に関する特徴と夢の中の私の果たす役割について検討する予備的な研究である。夢の構造分析は,ユング派の分析家たちが治療場面で主観的に実感していた夢の構造の持つ意味を客観的に示すために,ユング派の分析家Roeslerによって考案された。夢系列には対象との関係の中で夢の中の私が主体的に成長するというテーマが一貫して繰り返され,夢系列の終盤には夢の中の私による死と再生のプロセスの体験が出現するという特徴が,両事例に共通して示された。しかし夢の中の私が主体的に成長するあり方,死と再生のプロセスの体験の仕方には違いが示唆された。