箱庭療法学研究
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研究報告
児童養護施設における“傷”をめぐるプレイセラピー
“傷つくこと”“傷つけること”への内在的アプローチ
江野 肇
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ジャーナル 認証あり

2021 年 34 巻 1 号 p. 3-13

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抄録

今日,“心の傷”という言葉はPTSDの概念を超えて日常語として使用されている。“心の傷”の心理療法では,その背後にある“原因”を“特定”して,“取り除く”“修正する”ことで治療するモデルがしばしば使用される。しかし,特に児童養護施設の子どもたちにこれらを適用する場合,彼らの体験の個別性を見落としてしまう等の限界が認められる。よって,本論では,ユング派の内在的アプローチの視点から児童養護施設でのプレイセラピーの事例を考察し,傷を“取り除く”のではなく,傷に“近づく”ことによる治療の有効性を検討した。最初にクライエントの表現したイメージからは,“傷つくこと”と“傷つけること”を回避する在り方が認められた。しかし,セラピストがクライエントの“傷イメージ”を共有し,深くそれに関わることで,クライエントも自身の傷つきを受け入れることができ,他者と対等に関われるようになったと考えられた。

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© 2021 日本箱庭療法学会
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