2021 年 34 巻 2 号 p. 17-27
内観療法とは,自分の親について思い出すだけではなく,それに付随する親に対する自分のイメージを見つめることにより,自分を変容させる方法であると考えられる。内観療法では特定の課題を集中的に行うことを通して,個人レベルの母イメージだけではなく,集合的な意味での母イメージを体験することにより,内観者の自己変容が促されていると思われる。内観療法の事例を,クライエントとセラピストの関係としてとらえ直すことにより,イメージからとらえた内観療法のメカニズムについて,今までにない視点から深く理解できるのではないかと考えている。そのため,本研究では,摂食障害の20代後半の女性の内観療法事例を通して,イメージがどのように働いているのかを,クライエント・セラピスト関係による「場」の観点から考察してみたい。