2021 年 34 巻 2 号 p. 61-67
本研究は,制作者の特性としての自我が,箱庭の主観的体験にどのように関係するかということを検討することを目的とした。まず,274名に自我機能調査票を実施し,低群・高群・平均群に分けた。各群から11名,計33名の調査協力者は箱庭を制作し,半構造化面接を受けた。その後,「自我と箱庭イメージの関係性尺度」に回答した。2つの尺度の相関分析の結果から,自我が弱い制作者ほど,箱庭を異質的に感じやすいのではないかという可能性が示された。また,インタビュー調査についての分析からは,各群の制作過程において,退行についての違いがある可能性が示唆された。以上より,箱庭における制作者の自我が主観的体験に違いをもたらすことが明らかになった。