2022 年 35 巻 1 号 p. 3-15
本稿では,心身症の高校生女子への箱庭療法過程を報告する。本事例の治療過程は,箱庭療法の特徴がよく表れた,この治療法の標準的な治療過程となった。当院における治療構造は,人的にも時間的にも余裕のない精神科クリニックにおいて箱庭療法の施行が可能となるよう考案したものであるが,そのため若干,標準的な治療構造とは異なり,箱庭制作時の見守り手は存在しない。箱庭療法において,治療者-クライエント関係が重要であることは当然であるが,制作時の見守り手の存在は必須ではないかもしれない。本稿では,箱庭療法の治療機序についての若干の考察を述べた。さらに,心身症が箱庭療法のよい適応である理由についても述べた。