産婦人科の進歩
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原著
培養ヒト顆粒膜黄体細胞によるinsulin-like growth factor binding protein(IGFBP)の産生分泌とその黄体細胞機能への関わり
藤田 一郎山辺 晋吾丸尾 猛
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2003 年 55 巻 3 号 p. 281-287

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抄録

[目的]Insulin-like growth factor(IGF)とその結合蛋白であるIGF binding protein(IGFBP)は諸臓器の機能調節に関わり,卵胞発育や黄体形成にもIGF-IGFBP系は重要な役割を果たしていることが知られている.本研究では,ヒト顆粒膜黄体細胞培養系を用いて,顆粒膜黄体細胞によるIGFBP産生分泌と黄体機能の関係を明らかにすることを目的とした.[方法]体外受精胚移植の採卵時に卵胞液,卵胞洗浄液より顆粒膜黄体細胞を採取して培養し,培養液を24時間毎に交換して培養液中estradiol(E2),progesterone(P4)濃度を測定した.また,培養開始48時間後にhuman chorionic gonadotropin(hCG)を0,30,300,3000 mIU/ml添加して48時間培養し,無血清培養液に交換して,さらに48時間培養(培養開始後96~144時間)を続けた.この培養液中E2,P4濃度を測定するとともに,125I-IGF-IIを用いたWestern ligand blotにてIGFBP解析を行い,bioimage analyserを用いてIGFBP濃度を定量化した.[結果]顆粒膜黄体細胞培養液中E2濃度 は時間経過に伴う変化を示さずほぼ一定であったが,P4濃度は培養開始後上昇し,培養開始後96時間でピークに達した後,120~144時間に有意な低下を示した.顆粒膜細胞培養開始後48~96時間にhCGを添加し,96~144時間に無血清培養した培養液中P4濃度は,hCG非添加群に比べてhCG 30 mIU/ml添加群で1.8倍,300 mIU/mlで3.7倍,3000mIU/mlで3.6倍に上昇した.この培養液のIGFBP解析ではIGFBP-2とIGFBP-3が検出され,IGFBP-2,IGFBP-3量はhCG添加濃度の増加に伴い減少した.とくにIGFBP-2はhCG 300,3000 mIU/ml添加群で非添加群に比較して有意な低下を示した.[結論]培養ヒト顆粒膜黄体細胞からのIGFBP-2,IGFBP-3産生分泌が黄体細胞機能の低下時期に一致して認められ,とくにIGFBP-2産生分泌はhCG添加による黄体細胞機能促進と逆相関を示して減少したことより,黄体細胞活性の制御に関与していると考えられた.〔産婦の進歩55(3):281-287,2003(平成15年8月)〕

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© 2003 近畿産科婦人科学会
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