2014 年 66 巻 1 号 p. 36-42
G-CSF産生腫瘍は,婦人科領域では比較的まれな腫瘍である.今回われわれはG-CSF産生卵巣未分化癌の1例を経験した.症例は47歳,未経妊で発熱,腹痛を主訴に救急外来を受診した.来院時の白血球数は21130/μlと高値であった.造影CTにてS状結腸癌穿孔による限局性腹膜炎の診断となり,S状結腸部分切除,小腸部分切除,子宮全摘,両側付属器切除を施行した.病理組織診断にて,卵巣未分化癌の腸管浸潤と判明した.脳性麻痺であり,追加治療が困難な状況であったため術後化学療法は施行せず,外来フォローとなった.術直後より白血球数は正常範囲内で推移したが,術後3カ月にて腹腔内再発を確認した.再発腫瘤の増大と並行して白血球数は158930/μl まで増加し続け,術後約6カ月で死亡に至った.再発時の著明な白血球数増加からG-CSF産生腫瘍を疑い,腫瘍摘出後に白血球数が減少したこと,剖検後の病理組織学的検索にて免疫染色にてG-CSF陽性であることから,G-CSF 産生腫瘍と診断した.悪性腫瘍に白血球数増加を伴う場合,G-CSF産生腫瘍を念頭におくことの必要性が示唆され,若干の文献的考察も加えて報告する.〔産婦の進歩66(1):36-42,2014(平成26年2月)〕