2019 年 71 巻 2 号 p. 142-148
肝様腺癌は肝外に発生し,組織学的に肝細胞癌に類似した予後不良な腫瘍である.しばしばα-fetoprotein(AFP)を産生する.子宮体部原発例はきわめて珍しく,さらに進行例における長期生存症例は報告されていない.今回われわれはTC療法が奏効した子宮体部原発肝様腺癌の進行例を経験したので報告する.症例は76歳,2妊2産婦.2カ月続く下腹部腫瘤感を主訴に当院を受診した.初診時子宮は男性手拳大に腫大し,MRI検査では子宮は体部後壁を主座とする腫瘤に置換されていた.またPET-CT検査にて骨盤および傍大動脈リンパ節転移・肺転移を認め,血液検査ではCA125・CA19-9・CEAはいずれも正常範囲内であったがAFPが1476 ng/ml(正常値,<10 ng/ml)と上昇していた.内膜組織診はhigh-grade serous adenocarcinomaとされた.子宮体癌IVb期と診断し,腹式単純子宮全摘術兼両側付属器切除術および骨盤リンパ節生検を施行した.病理検査結果は肝細胞癌類似の腺癌であり,同部位は免疫染色でAFP陽性が確認されたことから,最終的に子宮体部の肝様腺癌(pT3bN1M1)と診断した.術後TC療法を施行したところ,病勢指標である血清AFPは速やかに正常化し,16コース終了の時点でリンパ節および肺転移巣の消失を認め化学療法を終了した.9カ月経った現在も明らかな再発所見を認めていない.原発巣にかかわらず肝様腺癌は早期から脈管侵襲をきたし,完全切除を行った例でもしばしば再発がみられる.一方で確立された化学療法はない.本症例は,当院での類内膜癌治療に準じて腫瘍減量手術およびTC療法を行ったところ奏効し,長期生存という結果を得られている.IVB期という進行例でここまでの長期生存は今まで報告されておらず,TC療法を含めた集学的治療が予後の改善に寄与する可能性が示唆された.〔産婦の進歩71(2):142-148,2019(令和元年5月)〕