産婦人科の進歩
Online ISSN : 1347-6742
Print ISSN : 0370-8446
ISSN-L : 0370-8446
症例報告
同一腫瘍内にlow grade endometrial stromal sarcomaとPEComa family of tumorsが合併した1例
川口 雄亮冨田 裕之福谷 優貴平山 貴裕松原 慕慶三木 通保藤原 潔
著者情報
ジャーナル 認証あり

2019 年 71 巻 3 号 p. 274-281

詳細
抄録

Low grade endometrial stromal sarcoma(low-grade ESS)は,閉経前の女性に好発する子宮体部の充実性腫瘍である.一方,Perivascular epithelioid cell tumor(PEComa)は,結節性硬化症との関連が報告されているまれな間葉系腫瘍で,肺,腎臓,子宮などに発生する.今回,low-grade ESSの一部にPEComa様の組織像を呈した症例を経験したので報告する.症例は結節硬化症, 子宮筋腫を既往にもつ45歳3妊2産の女性である.健診の胸部レントゲン検査で肺結節陰影を指摘され,X年Y月当院を受診した.胸部CT検査で両肺に多発肺結節を認め,転移性肺腫瘍を疑われたが,骨盤の造影MRI検査で子宮腫瘍は変性子宮筋腫と診断され,悪性腫瘍を疑われなかった.診断目的の胸腔鏡下肺部分切除術を施行,術後病理検査でPEComa family of tumors と診断され,シロリムスを投与した.その後,子宮腫瘍の増大が起き,X+2年Y-3月単純子宮全摘出術,両側付属器切除術を施行した.術後病理組織検査でPEComa様の組織像を一部に呈したlow-grade ESSと診断された.X年に摘出された肺病変を病理組織学的に再検討した結果,low-grade ESSの肺転移であったと考えられた.子宮,両側付属器摘出後9カ月経過したが,肺の多発結節は明らかに縮小,減少し,腹腔内にもlow-grade ESSの再発は起きていない.Low-grade ESSは20~30年後の再発が報告されており,今後の長期的な経過観察が重要である.〔産婦の進歩71(3):274-281,2019(令和元年8月)〕

著者関連情報
© 2019 近畿産科婦人科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top