劇症型溶血性レンサ球菌感染症は,突発的に発症し,急速に多臓器不全に進行するA群β溶血性レンサ球菌(streptococcus pyogenes;S. pyogenes)による敗血症性ショック病態に至る致死率の高い感染症であるが,20代の若年女性に発症することは非常にまれである.今回,STSSと診断し救命できた症例を経験したので報告する.20歳の健常な女性が骨盤腹膜炎を発症し,急激にstreptococcus toxic shock syndrome(STSS)に陥った.当初,激しい腹痛,発熱に下痢の症状を伴ったため,細菌性腸炎などとの鑑別に苦慮した.翌日血液細菌培養よりグラム陽性レンサ球菌を認め,A群β溶血性レンサ球菌(S. pyogenes)と同定し,streptococcus toxic shock syndrome(STSS)と診断された.直ちにペニシリンG,クリンダマイシンの大量投与を開始し,最終的に後遺症なく救命しえた.20歳の健常な若年女性の骨盤腹膜炎にSTSSを合併した報告は非常にまれである.若年性女性でも骨盤腹膜炎にSTSSを合併しうることはあり得るので,血液培養を含む検査データを注視し迅速に診断することが重要であると考えられる.〔産婦の進歩74(1):46-50,2022(令和4年2月)〕