産婦人科の進歩
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母体ならびに新生児の血中ATP量に関する臨床的研究(特に新生児黄疸との関連について)
児玉 千代子
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1971 年 23 巻 3 号 p. 196-215

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抄録

母体ならびに新生児の血中ATP量をMcElroy氏法に従って測定し, その消長から母児におけるエネルギー代謝の動態を検索するとともに, ATP製剤投与の血中ATP濃度におよぼす影響について臨床的に検討を加え, 特に新生児黄疸と血中ATPとの関連について追求した.
すなわち妊娠の血中ATP量の消長は, 妊娠初期に一時的な低下を来たすが, 妊娠中期後半より漸増して妊娠9ヵ月目に最高値を示し非妊婦値に対して約25%の上昇率がみられた. 臍帯血中のATP量は母体血値に比して著しい低値を示したが, 特に仮死児の臍静脈血においてその傾向は著明であった.
新生児期における血中ATP量の消長は, 生後15分目に一時的な上昇を示したのち再び生後/時間目に最低値をとるが, その後漸増して生後24時間目には母体血値に接近した. しかし高ビリルビン血症児・溶血性疾患児においては全般的に著明な低値を示した.
一方ATP製剤と肝庇護剤を混合投与したところ, 血中ATP量の増加とともに血清ビリルビン値の低下, 血清トランスアミナーゼ活性値の低下を認め, また赤血球にアデニン+イノシン+グルコースを添加したいわゆるATP richcell群においては形態維持の安定化が認められ, 血中ATP量と新生児黄疸の間に密接な相関関係が認められた.

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© 近畿産科婦人科学会
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