産婦人科の進歩
Online ISSN : 1347-6742
Print ISSN : 0370-8446
ISSN-L : 0370-8446
白鼠胎仔および新生仔肝の電子顕微鏡的研究
東山 敏子
著者情報
ジャーナル フリー

1973 年 25 巻 6 号 p. 599-629

詳細
抄録

胎仔肝においては, 肝自体の急速な発育増殖とともに造血機能, glycogen あるいは脂質の代謝, 胆汁分泌等の複雑な機能を営み, 出生後には哺乳により供給された栄養源の利用のための重要な役割を果しており, 殊に胎生末期には glycogen が急速に蓄積され, 分娩後には速やかに消失することが知られている。そこで白鼠を用いて胎仔および新生仔の肝実質細胞 (以下肝細胞) についてその微細構造の逐日的変化, 特に出生前後における glycogen の消長と細胞小器官の変化との関係を電子顕微鏡 (以下電顕) 的に研究し, もって肝細胞の体外生活への順応機序を明らかにするべく本研究を行なった.
胎生第13日で肝細胞はすでに糸粒体や内腔がやや拡大している小胞体などの小器官に富み, 毛細胆管も明らかで, 何らかの活発な機能を営んでいることが推察された.
glycogen は胎生第17日より認められ, 胎生第19日より著増して巨大な glycogen 野るとなるが, その形成には粗面小胞体が糸粒体に密接して豊富なエネルギーの供給を受けながら ribosome とともに関与しているものと思われた.
出生直後から出生後第12時間の間に glycogen 野は急速に消失し, 生後まだ十分でない哺乳に代っての重要なエネルギー源と考えられるが, この glycogen の動員には内腔の開大した粗面小胞体, lysosomal body, glycogenosome などが関与しているものと思われた.
哺乳が活発となると肝細胞には glycogen が再出現するが, これには再び層状となった粗面小胞体および滑面小胞体が協同して関与するものと思われた. またこれと同時に, 細胞の基質に明暗の区別がみられ, かつ glycogen, 脂質顆粒, 糸粒体と小胞体, あるいは小形で不整形の好 osmium 顆粒をそれぞれ主とし, あるいはその混合形など5種類の細胞がみられ, 各細胞により異なる機能状態を呈し, 哺乳により供給された栄養源の利用に適応した機能分化の像が明らかにされた.

著者関連情報
© 近畿産科婦人科学会
次の記事
feedback
Top