産婦人科の進歩
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抗生物質の腹腔内注入後におこる腸管漿膜の表面微細構造の変化
木下 道雄竹口 尚道田中 正明石黒 達也椹木 勇
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1976 年 28 巻 6 号 p. 561-574

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抄録
産婦人科領域における感染症は, 抗生物質の出現によって著明に減少してきたが, なお致命的な結果をもたらすことがある腹腔内重症感染に対して, 開腹時抗生物質の腹腔内撒布が行われている. しかし薬剤によっては局所に対して刺激的に働き, 広汎な腸管癒着を惹起する可能性がある.
われわれは先きに, 種々の腹腔内注入異物に対する腸管漿膜表面微細構造の変化を報告したが, これを基礎にして aminoglycoside 系抗菌剤 (Vistamycin) の5%, 25%, 50%希釈液をマウス腹腔内に注入し, 同様の実験を行った. その結果, いずれの場合も肉眼的癒着形成は認められなかったが, 走査電顕的には5%希釈液では全く変化はみられなかったが, それ以上になると漿膜上皮細胞, とくに microvilli に強い変化がみられた. 従って Vistamycin の腹腔内投与を行う場合は, 5%希釈液が望ましく, それ以上の濃度では, 腹膜障害を惹起する可能性があるため, 使用を避けるべきと考えられた.
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© 近畿産科婦人科学会
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