産婦人科の進歩
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ラット卵細胞成熟分裂におけるエストロゲンの意義に関する実験的研究
森 崇英鈴木 瞭森本 紀彦江崎 洋二郎久保 潔士新居延 健二西村 敏雄
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1980 年 32 巻 4 号 p. 327-333

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抄録

高い抗体価を有する家兎抗estrone抗血清で, 特異的に内因性estrogenの生物活性を中和する手法を用いて, estrogenの卵細胞成熟分裂再開調節機構への関与を検討した. 生後22日齢のウィスター系幼若雌ラットにPMS5I. U. を皮下注し, 56時間後にhCG10I. U. を尾静脈から投与し, さらに6または18時間後に卵巣を摘出した. 抗血清は1回0.4mlをPMS投与後0, 24, 48時間またはhCG投与と同時に静注した. 摘出卵巣はブアン固定を行ったのち, 連続切片を作成し卵胞をその最大直径から, 小(125μ以下), 中(125~250μ), 大(250μ以上)の3群にわけ, 卵核胞崩壊を形態的指標として, 成熟分裂を再開した卵細胞数を検鏡算定した. PMSと抗血清投与群では中, 大卵胞内卵細胞の再開率が, またPMS+hCGと抗血清投与群では主として中卵胞内卵細胞のそれが有意に増加した. この結果からhCG投与により誘導された排卵前estrogenは, hCGの再開促進作用に拮抗して, 特に中卵胞内卵細胞の成熟分裂再開に対する抑制因子の1つとして, 卵巣局所レベルで作用していることが推想された.

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© 近畿産科婦人科学会
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