抄録
北海道H町において199 戸の全ての酪農場を対象に,搾乳関連排水の性状(ふん尿混入の有無など)の聞き取りを行うとともに,最終処理の実態(農場内の排水経路や圃場還元の有無など)を調査し,排水へのふん尿の混入および沈殿槽の有無に着目して,同町の排水処理方式を5種類に分類した。その分類をもとに15 戸の酪農場を選んで搾乳関連排水を採取・分析し,同町に適する排水処理対策を検討した。パーラー搾乳であるフリーストール酪農場の約2 割からは,ふん尿が混じった搾乳関連排水が排出され,汚濁度は比較的高かった。つなぎ飼いのパイプライン搾乳から生じる搾乳関連排水の汚濁度は比較的低く,複数の沈殿槽を有する事例では排水基準を満たす場合もあった。同町における搾乳関連排水の処理対策としては,高度な浄化処理を行うよりも,まずは排水にふん尿を混ぜない方策が有効であり,その上で複数の沈殿槽を設け,必要に応じて植物浄化などを組み合わせる方法が適していると判断された。