抄録
フィチン酸に組みこまれたリンは, とくに穀類や豆類では全リンの50~80%を占めている。しかし, この物質は難分解性で, 非反すう動物ではその大部分が未消化のまま排泄されるため, リンの栄養素要求量を満たすことを目的として, 飼料に無機リン酸塩を添加している。しかし, 飼料原料中の無機リンとフィチン態リンの多くが排出され, 環境汚染の一因となっている。最近, フィチン酸を分解するフィターゼを飼料に添加してフィチン酸のリンを無機化させ, 無機リン酸塩の添加を削減する飼養技術が普及し始めている。この技術が普及すると, 非反すう動物のふん中の無機リン酸塩量が減少し, そのリン酸肥料効果が大きく減退すると予想される。
本研究では, 市販のフィターゼを牛ふん堆肥, 豚ぷん堆肥, 鶏ふん堆肥及び稲わらに添加し, 試料のフィチン酸からどの程度リンを遊離させ, 有効化させることができるかを検討した。
試料にフィターゼを1.25U/g添加し, 55℃で16時間インキュベートしたことにより, 試料中のフィチン酸から遊離した無機リンは, フィターゼ添加前の試料に存在した無機リンと比べて, 牛ふん堆肥, 豚ぷん堆肥, 鶏ふん堆肥, 稲わらでそれぞれ14.3, 13.6, 9.15, 46.2%増加した。
このように, フィターゼを添加することにより, 家畜ふん堆肥や稲わらに含まれているフィチン酸を加水分解させ, その肥料効果を高める可能性が示された。