生物物理化学
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特別企画II:臨床検査領域におけるプロテオミクスの現状と未来像
高分子量蛋白質を対象とした疾患診断用マーカー探索
大石 正道小寺 義男前田 忠計朝長 毅西森 孝典清宮 正徳松下 一之野村 文夫
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2010 年 54 巻 1 号 p. 35-39

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抄録

疾患プロテオミクスでもっとも期待される分野の一つとして疾患診断用マーカー蛋白質の探索が挙げられる.しかし,分子量100 kDa以上の高分子量蛋白質の解析はとても難しく,イモビラインを用いた二次元電気泳動法では解析できなかった.我々は,600 kDaの高分子量蛋白質も解析可能な,一次元目にアガロースIEFゲルを用いた二次元電気泳動法(アガロース2-DE)を用いて,食道扁平上皮癌,大腸癌および肝細胞癌で,それぞれ疾患プロテオーム解析を行い,各種マーカー蛋白質候補を多数検出することに成功した.中でも,食道扁平上皮癌においては非癌部に比べて200 kDaのperiplakinが有意に減少し,肝細胞癌では190 kDaのclathrin heavy chainが非癌部に比べて顕著に増加するなど,アガロース2-DEを基盤としたプロテオミクスの手法が高分子量蛋白質の疾患マーカー探索に有用であることが明らかになった.

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© 2010 日本電気泳動学会
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