生物物理化学
Online ISSN : 1349-9785
Print ISSN : 0031-9082
ISSN-L : 0031-9082
特別企画II:臨床検査領域におけるプロテオミクスの現状と未来像
卵巣明細胞腺がん関連タンパク質の発現調節
荒川 憲昭増石 有佑平野 久
著者情報
ジャーナル フリー

2011 年 55 巻 1 号 p. 5-8

詳細
抄録

プロテオミクスは,種々の疾患に対する新規な診断マーカーや創薬ターゲット探索の方法として役立っている.著者らは,悪性度の高い卵巣癌である卵巣明細胞腺癌(CCA)に特異的に発現するタンパク質を,CCA細胞株と非CCA細胞株のタンパク質をプロテオミクス的アプローチにより探索した.そして,アネキシンIVを含む様々なタンパク質の発現が CCA 細胞株で増加することを見いだした.これらのタンパク質は,ウエスタンブロッティングや定量的RT-PCR分析によってCCA細胞株で発現上昇することが確かめられた.アネキシンIVのプロモーター解析によって,p53結合モチーフがこのCCA特異的な発現に係わっていることが明らかになった.CCA細胞株のp53遺伝子には変異はなかった.RNAiによってCCA細胞株のアネキシンIVの発現は減少した.アネキシンIV遺伝子はCCA細胞ではp53によって制御されていると言える.CCA細胞からはp53により発現誘導される様々なタンパク質が増加していることが確認された.従って,p53の機能的な状態がCCAのプロテオームの特徴を形成していると考えられる.

著者関連情報
© 2011 日本電気泳動学会
前の記事 次の記事
feedback
Top