生物物理化学
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簡易薄層電気泳動法による血清酵素蛋白成分の解析
荻田 善一佐子山 豈彦千葉 泰人益沢 学
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1973 年 17 巻 2 号 p. 63-70

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抄録

薄層ポリアクリルアミドゲル電気泳動法を用いた血清蛋白成分の泳動分離における解像力はセルロースアセテート電気泳動法に比べはるかに優れている.しかしながら操作法の簡便さという点ではセルロースアセテート電清気泳動法に劣る.
著者らはポリアクリルアミドゲルを支持媒質とする簡易薄層電気泳動法を考案し,血清酵素蛋白成分について泳動分離条件を検討してきた.操作法の簡便化という目的のために片面がスリガラス様の粗面をもった製図用のポリエステルフィルムの上に予じめ目的に応じた緩衝液を含んだアクリルアミドゲル薄層(1mm又は2mm)を形成させて湿室に保存しておく.このようにして,薄層アクリルアミドゲルの調製操作を省くことができる.
支持シートとして,セロファン(124PDセロファン)又は片面がスリガラス様の粗面をもった製図用ポリエステルフィルムを用いた.
試料として,血清は希釈することなくゲル薄層表面に予じめ作られた溝に添加した.1mm厚さのゲル薄層には3μl,2mm厚さのゲル薄層には15μlの血清を添加する.
電極液槽用緩衝液を満した両液槽間に試料を添加したゲル薄層を置き,ゲル薄層の両端を緩衝液で湿らせた濾紙の1端を5mm程度重ねるようにのせ電極液槽との電気的連絡を行なう.
温度の上昇を防ぐために電気泳動は5℃~10℃の保冷庫内で行なった.電気泳動はゲル幅1cm当り0.5~1.0mAで,120分行なった.
泳動終了後,染色,脱色,固定したゲル薄層はガラス板上でセロファンシートの間にサンドイッチ状にはさんで室温で約2日間乾燥させ,乾燥ゲルフィルムとして保存する.
また,この簡易薄層ポリアクリルアミドゲル電気泳動法はSDSを含んだゲル薄層を用いることによって,ペプチドの分子量を簡単に,しかも正確に推定できる有利な方法である.

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© 日本電気泳動学会
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