生物物理化学
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ウマ筋肉型炭酸脱水酵素 (CA-III) のトリプシン-ペプチドマップ
西田 利穂
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1986 年 30 巻 1 号 p. 59-65

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抄録

ウマCA-IIIをトリプシン分解してペプチドマップを作製した. CA-IIIのペプチドマップにおいては, 26個のペプチドが検出された. 各ペプチドのアミノ酸分析の結果, アルギニン (Arg) を含むペプチドは12個, リシン (Lys) を含むペプチドは13個, Arg と Lys を含むペプチドは1個であった. シトラコニール化したCA-III を同様にして分析した結果, ペプチドマップ上では13個のペプチドが検出された. アミノ酸分析の結果, Arg を含むペプチドは8個, Lys を含むペプチドは1個, Lys と Arg を含むペプチドは4個であった. CA-III をシトラコニール化したにもかかわらず, Arg を含まないで Lys を含むペプチドが存在したことから, ペプチドNo.9のC末端がCA-IIIのC未端と推定された. CA-IIIaのペプチドマップでは, No.25のペプチドが消失した以外はすべてCA-IIIのそれと同様であった. CA-IIIを未変性下でアルキル化すると, システイン(Cys) はNo.21のペプチド中に2個検出された. 6M尿素中で還元アルキル化したCA-IIIでは, さらにNo.25のペプチド中に2個の Cys が検出された. このことから, CA-IIIaはNo.25のどちらか一方の Cys にググルタチオンが結合していることが示唆された. ウシCA-IIIの1次構造と, 各ペプチドのアミノ酸組成を比較し, その類似性からウマCA-IIIの1次構造を推定した. その結果, ウマCA-IIIとウシCA-IIIの1次構造は類似性の高いことが推察された.

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