生物物理化学
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コレステロール分画・トリグリセライド分画同時解析法による特殊なパターンの分類と臨床的意義
大井 絹枝櫻井 裕子森下 芳孝登 勉
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2003 年 47 巻 4 号 p. 161-168

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抄録

Chol 分画・TG分画の同時解析法によりWHOの高脂血症表現型に分類し難い特殊なパターンの分類とその臨床的意義を検討した.
LDLの位置にTGのピークが出現し, HDLおよびVLDL分画が殆ど認められないTG-rich な異常LDLは, 高度の肝機能低下により出現し, 3つに分類できる. 病態・疾患による差を認め, broad タイプ (B) は悪性腫瘍に多かった. Lp-Xは閉塞性黄疸など高度の胆汁うっ滞でLDLの陰極側に出現する Chol rich なバンドであり, 異常LDLの出現を伴うことが多い. Lp-Yは易動度・疾患ともにLp-Xと似ているが Chol とTGを含有する. 異常LDL, Lp-X, Lp-Yは予後不良例が多くみられる. slow αHDLは, 軽度の胆汁うっ滞時に出現し, アポEの増加を伴い, 予後良好例が多い. VLDL-LDL間に出現する主なバンドは, IDL (VLDLレムナント) とLp (a) である. IDL (VLDLレムナント) はTG rich でLp (a) は Chol-rich でシャープなバンドである. FFAの影響が顕著な例は, 高濃度のFFAが存在すると脂質と結合し脂質分画全体が陽極側ヘシフトするため見かけ上CMFが大きくなるが, アルブミン添加により易動度を正常化してCMFを求める必要がある. TG著増例は, LPL遺伝子異常で出現することが多いが, 今回のTG著増例は, 抗癌剤の副作用が原因であった. また, カイロミクロンレムナント出現例を1例経験したがLDLとCM間に出現し, TG rich なバンドであった.

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© 日本電気泳動学会
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