抄録
粉未基剤を使用している化粧品では, 香料の匂い立ち, 保香性は重要な問題である。これらの問題は有香物質の粉末への吸着性が大きく関与している。そこで化粧品原料として用いられている種々の無機粉末 (3種のタルク, 2種の酸化チタン, 亜鉛革, 炭酸カルシウム, 無水ケイ酸, 塩基性炭酸マグネシウム) に対するリモネンの吸着性についてガスクロマトグラフに接続された吸着測定装置を用いて測定した。9種の無機粉末に対するリモネンの総吸着量を溶出法による吸着等温線からラングミュアー式を適用して算出し, パルス法によって不可逆吸着量を測定して, これらの値より可逆吸着量を計算した。
実験結果は,
(1) 炭酸マグネシウムの総吸着量が最も大きく, かつその大部分が可逆的である。また, 炭酸カルシウムは総吸着量が最も小さい値を示した。
(2) 酸化チタンの不可逆吸着量はアナターゼ型がルチル型の約10倍の大きさを示した。
(3) 無水ケイ酸はほとんど大部分が不可逆吸着量であった。
これらの結果を基にして, 粉末製品に対する香料の保香性およびその簡易テスト法の可能性について論じた。