社会経済史学
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戦時体制下における地方銀行経営の変容 : 両羽銀行の事例
白鳥 圭志
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2008 年 74 巻 1 号 p. 63-86

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抄録

本稿では戦時体制下における地方銀行経営の変容が,基本的に戦後の経営の在り方との断絶性が強いことを論じた。両羽銀行は地元のほか,主に首都圏方面での貸出増加により危機からの脱却を図った。太平洋戦争期になると,国債消化に伴う資本金利益率の低下を,純資産による銀行合同により補った。その際,大蔵省が利害調停者として重要な役割を果たした。また,被買収銀行も(1)昭和恐慌期に既に経営が行き詰り救済を受けていた類型,(2)両大戦間期の危機からの脱却が不十分なまま,国債消化に伴う低収益に襲われた類型,(3)通説通り国債消化による低収益に苦しんでいた類型,に分類される。貸出については「時局産業」向けであることそのものに安全性の根拠を求めて,貸出審査を省略した。経営組織面でも貸出,為替関係部門は縮小し,預金関係部門が増大した。このような組織変化は,銀行合同を通じて規模拡大が見られた点では戦後のそれに連続する面があるものの,それ以外の面では断絶性が濃厚であった。

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© 2008 社会経済史学会
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