社会経済史学
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明治初期横浜居留地の生糸取引における制度とその形成過程 : 『連合生糸荷預所事件』の経済的意義
谷山 英祐
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ジャーナル オープンアクセス

2008 年 74 巻 2 号 p. 131-150

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抄録

本稿の課題は,制度が経済発展に重要な役割を果たすという視点から,横浜居留地における生糸取引の制度を分析することである。その分析を通じて,経済史研究において重要なトピックであった『連合生糸荷預所事件』の経済的意義を明らかにした。開港直後から生糸輸出は急増したが,輸出が増大するにつれ日本産生糸の品質低下が問題となった。この品質低下の要因は,取引相手を騙すといった不正取引にあった。それに対処するために外国商館は「拝見」という検査制度とともに「私商標」を確立させたのであった。しかし,「拝見」という検査制度には,外国商館の恣意的な取引という問題が存在した。公的な裁判制度が確立していない時期において,これらの取引上の問題に対して生糸売込商は組織化することでそれに対応した。さらに,外国商館に変わり売込商が生糸検査・選別を行うことを目的として,生糸改会社や連合生糸荷預所が設立された。『連合生糸荷預所事件』で争われたのは,生糸検査によって生ずるプレミアムの分配であった。

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© 2008 社会経済史学会
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